現場は槍の雨が降り注いでいた。 は傘で防ぎながら雑兵を捌いていく。 しかし時間の問題だろう。 の戦い方は把握している。 おそらく今敵の数、遠方の敵がどこで何人身を潜め攻撃してきているかを探っている。 数を、位置を把握しなければ殺られる。 現状打破の為奥にある森の方へ向かう。 こちらは目視で敵がどこに居るかがわかる。 表に出てる敵は空さえどうにかなれば1人でも何とかなるだろう。 「やれやれ、女1人に対して大掛かりだね」 1人のこめかみを撃ち抜く 「何者だ!」 誰かが叫んだ気がしたがそんなことはどうでもいい。 空に向かって撃ち続けていた矛先をこちらに向ける。 だがそんなものが利くほどこちらもやわではない。 次々に人はただの肉塊に変化していく。 「なんだ、手応えがないな。こんなので夜兎と殺りあおうなんて舐められたもんだ」 丘の方へ戻るとこの集団の頭らしき男がなにか喚き散らしている。 手始めに首を飛ばす。 「貴様何奴!!!!」 「討てええええええ!!!」 その言葉と共にのほうにいた軍勢の矛先がこちらに向く。 こちらもとくに手応えはなかった。 弱っちいただの人間か。 1人、また1人と肉塊へと変貌を遂げていく。 の方を見ると最後の1人が眼前に迫っていた。 おそらく油断したのだろう。 完全に反応しきれずに硬直していた。 走っても間に合わない距離。 発砲して貫通した場合に流れ弾がいかないとも限らない。 最終手段として傘を全力で振り投げる。 勢いよく腹の真ん中に突き刺さる。 相手の動きが停止したが止めとして傘を横にスライドさせ身体を分断するとズルズルと倒れていく。 「危なかった…」 「ほんと危なかったよ。もうちょっと遅かったらが死んでたかもしれない」 声をかけるとは再び攻撃の構えをとる。 どうやら敵と味方の区別がつかないらしい。 「よくそんな状態で戦おうとするね。俺だよ。」 「幻聴かしら?頭でもやられたのかな…いないはずの人の声がする…」 幻聴なんかじゃないよ。 ゆらゆらとの瞳が揺れている。 俺はここにいると示すようにそっとを抱き寄せた。 ほんの少し身体がびくりと跳ねた 「さ、実はもうほとんど見えてないんじゃない?」 「そんなことない。ちゃんと見えてるわ。だって…」 「じゃあ、俺が今どんな顔してるかわかる?」 「それは…」 「わからない?こんなに近くにいるのに?」 いつだったか。 別れの時には顔を近づけた。 あの時と同じ、もう少しで唇が触れそうな距離。 それでもは見えていないようだった。 あれはいつだったか。 は覚えてる?約束したよね? 「を護るって」 「…それは戦場で私の背ががら空きだからって理由じゃなかったっけねえ」 の手がそっと身体を離すように動いた。 「残念だけど、もうその約束、守る必要なんてないんだよ。私は戦場ではもう生きていけないんだから。 だからもうここに来る必要はないよ。」 まったく、はバカだ。 どうしようもないくらい。 「俺がいつの背中護るなんて言ったかな。 何より、帰る場所はそっちじゃないよ。自分の居場所もわからなくなったの?」 腕をぐいと引っ張られ、どんどん進んで行く。 「ちょっと、そっちは家の方角じゃない気がするんだけど」 「だから、帰る場所はこっちだよ。」 に見えないもの (1度手を離れてしまったから) (なによりも大切なんだとわかる)

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