第七師団に戻ってからいくらか月日が経った 私の目はもう光さえ認識できない。 ある程度船内はわかってはいるものの どうしても1人で歩くと覚束無い 「どうせなら手繋ごうよ」 「それは嫌。というか羽織の裾掴むだけで十分だもの」 「そんな事言わずにさ?ね?」 手を握ろうとする神威を回避しようとすると誰かにぶつかった 「おいおい、こんな狭い通路で若い2人がいちゃつくなよ」 阿武兎だった。 「助けてください副団長」 「そりゃあ無理な頼みだ」 足音が遠ざかっていく。 おそらく立ち去ったのだろう。 「ほら行こ」 「何処に行かれるんですか?団長」 内緒 そう言われた。 もう何を言っても教えてくれないだろうから この件については聞かないでおこう。 「そういえば、あの時はなんで江戸にいたの?」 いつぞや、助けに来てくれたことを聞いてみる。 いつも昼間に来ていたはずなのになんであの時は夜中だったんだろう? 敵を仕向けたのは団長の仕業だったのか、 はたまた見張られていたのか…。 「がピンチの時はわかるんだよ。なんだろう、本能的に?」 そのよくわからない直感に助けられたと言うことか。 「そんなことよりさ、は俺のことどう思ってる?」 「どうもこうも、団長だとしか。」 「それ以外には?」 どうやらこの答えに満足してくれないらしい。 聞かれてる意味はわかっているつもりだ。 その上で話を逸らそうとしたのだが…。 「そうね…。」 「じゃあ聞き方を変えるよ?好き?嫌い?」 「嫌いじゃない」 でも好きまではいかない 素直にそう言った。 「俺はのこと好きだよ。ずっと、昔から。 こうやって直接言ったのは初めてだけどね。 だから、の気持ちも聞かせて欲しい」 だめ? 団長は今、どんな表情をしているだろう? 巫山戯てる? それとも真剣? 気になって顔があるだろう場所に手を伸ばしてみた。 伸ばした指先が触れる。 指先だけでは物足りなくなって手のひらでむにむにするように触れる。 「どう?わかった?」 「…わからない。私にはまだその答えは出そうにないわ」 少し胸の鼓動がはやい。 どくどくと脈打つ。 団長は笑ってはいなかった。 と、思う。 「私にはまだわからない」 本当は十分わかっていたが本人を目の前にして言う勇気がなかった。 ただひたすら逃げることだけを考えて、そして私は逃げ出した。 耳まで赤くなっているのが自分でもわかる。 これではもう、答えを言っているようなものじゃないか。 えないカタチ (好きだよ) (言わないけれど)

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