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江戸は住みやすい街だった。 今まで地上に長く滞在したことは無いが悪くない。 目は見えづらいが周りの人達が優しくしてくれているおかげでなんとかやっていけている。 情報屋としてそれなりの収入を得ている為、生活もそこまで厳しくない。 まさかここにきて情報収集の力が役に立つとは思わなかった。 江戸中の情報はある程度把握してる。 くだらない些細なことから情勢のこと、 宇宙規模のこと、取り扱うものは様々だ。 勿論、かつて自分が所属していた場所についても色々と入ってくる。 それなりに頑張っているらしい。 近く、第七師団が吉原を偵察に来るらしい。 隠居しても尚恐れられているとは鳳仙も伊達に夜王と呼ばれていないという事か。 今では江戸の街を歩く時は着物を着るようにしていた。 できる限り、街に馴染めるようにだった。 今日は少し遠出して、日傘をさしてある場所へと向かう。 江戸でも郊外の方 小高い丘からは江戸市中を眺めることが出来る場所だ。 ガサッと草を踏みしめる音が聞こえた。 「来ると思ってたよ。春雨の雷槍、第七師団団長さん」 「さすが。よく知ってるね」 あんだけ宇宙で大暴れしてるんだから 耳にしない方がどうかしている。 「相変わらずってところ?」 「まあね。も元気そうでよかった。」 「そりゃどうも。ここに来た理由は何?殺しに来たって感じじゃないけど」 「何でも知ってるなら、それくらい聞かなくても分かってるんじゃないかな」 鳳仙の旦那に会いに来たのさ 「師匠にねぇ…わざわざそんなことするようなたまじゃないでしょ。大方手合わせしに来たとか。」 それには何も答えなかった。 「じゃ、また来るよ」 そう残して足音はまた遠ざかっていく。 数日後、鳳仙は死に、吉原には太陽の光が射したという噂を聞いた。

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