ねぇ、届くかな?

残ったのは俺とだけだ。 「やっと会えると思ったんだけどなー…」 そっと眠る彼女に触れる 「最近また忙しくなってきてさ、今日もあんまり時間がないんだ…」 本当は連れていきたいけど、危ないから、ね。 せめてもう少し落ちつたら…。 本当なら手渡しがよかったんだけど そっと枕元に置いて部屋を出る。 「もうお帰りですか?」 「また落ち着いたら来るって伝えておいて」 通りすがりの花魁にそれだけ伝えて店を出る。 外はまだまだ暗かった もうあと数十分でこの地球を発つ予定だったか。 名残惜しいが ターミナルの方へ向かった。 翌日の昼頃 日の眩しさに目が覚めた。 高く上った太陽は煌々と吉原を照らしている。 『っ…。』 会えなかった。 折角きてくれたのに 枕元には綺麗に放送された包みがあった。 空けると、中には簪が入っていた。 ぽつぽつ、と簪の上に雫が落ちる そっと握り締め また会える“いつか”に思いを馳せた ねぇ、届くかな? (届いてるよ) (キミの想い)

*end*

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