会いに行く度、は必ずあの丘の上にいた。 江戸が見渡せる丘だ。 にはこの光景がどう見えているのだろうか。 「なんでいっつもここにいるの?」 「さあ…何でだろうね。なんかわからないけど気づいたら来てるの。」 「見えないのによく来ようと思うよね」 そういうとは少し寂しそうに笑って 「そうね、本当は危ないもんね。近所のおばさんにも言われたわ」 と言った。 「さて、遅くなる前に家に帰らなきゃ。神威もやることあるんだから」 そしてゆっくり丘をおりていく。 はいつも別れの時は何も言わなかった。 ちゃんとした用事で江戸に来ることもあった。 大概は何も無かったが。 またいつものように外れにある丘に行く。 「団長ともあろう方が裏切り者と一緒にいたら問題になるんじゃない?」 「その時は阿伏兎に何とかしてもらうよ。」 「副団長は便利屋でも何でもないんだから、自分で責任くらいとりなさいな」 また近いうちに江戸でちょっとした用事ができてね、その下見だよ。 といつものように嘘をつく。 「そういえば、いつぞやの吉原の件はどうなったのか聞きたいね。 神威が殺ったって触れ回ってたけど違うんでしょう?」 「まあね。始末したのは俺じゃない。」 吉原桃源郷、その主であり師である鳳仙は 銀色の髪の侍とその連れ そして吉原自警団らによって天井は開かれ 夜王は眠りについた 「なかなか面白いものが見れたよ。来てよかった。」 夜兎という戦闘部族の中でも上位の種族ではあるが それ以外にもこの星には侍という種族がいた。 今まで見たことのない新しい種族、その戦闘には賞賛に値する。 倒したのがあの夜兎の王なのだから。 「でも妹とは和解できなかった」 「…元々和解するつもりなんてないよ。弱い奴に用はない。」 かつて妹にそう言い捨て、置いていった。 そして久しぶりに再会した妹は、強いとは言えないものの それなりにはなってきたようだった。 「私も充分その弱いヤツだと思うんだけど、なんで今でも会いに来るのかな?」 どうして? 本気では聞いているらしい。 「は頭は良いのにどうしてこうも物わかりが悪いんだろうね」 ここに入った時から辞める時、 果ては今こうして辞めた後さえも事あるごとに会いに来ているのに、 少しくらいわかってほしい。 「神威には言われたくないわ。何も無いなら、ちゃんと団長としての勤めを果たした方がいいと思うけど。」 一陣の風が2人の間を吹き抜ける には、誰かの気持ちを理解しようとしたことがあるだろうか。 人のことを言えた義理ではないけど 「手厳しいなぁ。昔からではあるけど。 それとも前所属してた春雨のことは忘れたいとか?」 「そうは思っちゃいないよ。ただ、団長がこんなだと副団長は大変だなと思って言っただけよ。」 早く立ち去れと、そう言ってるように聞こえた。 何かしてはいけいことでもしただろうか? たしかに仕事はすっぽかしてはいるが 大事な時はちゃんとやっているつもりだ。 いつまでも付きまとうなということか。 「そう。じゃあ俺はの言う通り仕事をしてくるよ。またね。」 いつもはが先に降りる丘を 今回は自分が先に降りた。 それ以降、あの丘にはあまり行かなくなった。

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