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月日は経ち 鳳仙は第七師団団長の座を退け、後継者として神威が第七師団団長となった。 「それで、団長勤めはよくわからないから私に暫くつけって?」 「うん。だってずっとそれっぽいことしてたでしょ?知ってると思って」 「前団長が引き継ぎとかしてるものだと思うし、何より副団長がいるんだからそっちに聞けばいいじゃない」 それでもどうしてもというので 何が出来るわけでもないのにまた世話役に任命された。 「そういえば。前に比べてどれくらい見えなくなった?」 「…どれくらいって言われてもねぇ…」 前は辛うじて顔が見えるか見えないかぐらいだった。 今は完全に顔が塗りつぶされて見える。 「ふーん」 「聞いておいてその反応はないと思うけど」 「ごめんごめん。でもには俺がついてるし」 そう、なんやかんやで今でも昔の約束を守り続けているのだ。 律儀なことに。 しかし自分のこの病は治ることは無い。 いずれは必ず完全に見えなくなってしまう。 そうなれば戦うことも出来なくなってしまう。 ある程度見切りをつけなくてはいけないなと思っていた。 今がちょうどその時期なのかもしれない。 「団長、一つだけ頼みたいことがあるんです。」 「どうしたの?急に改まって。」 きっとその時の神威の表情はきょとんとしていたことだろう。 驚いていたことだろう。 でも、私にはその表情はわからない。 「団長が団長として自立したら、私はここを、第七師団を辞めたいと思っています。 その許可を頂けませんか。」 「…辞めるといって辞められるほど甘くないのはが一番よくわかってるよね?」 春雨を辞める それは抜ける。裏切る。その類と同等である。 そして裏切り者は必ず粛清される。 地の果て宇宙の果てまでも、その追っ手から逃れることは無い。 「それは勿論。でもここにいても私にとっては変わらない。 どうせいつかは使い物にならなくる。 そうしたらきっと、同じような道を進むことになると思う。 なら、いっそ自分の意思でちゃんとけじめをつけたいんです。」 ほんの少し、沈黙が部屋を包んだ。 「の決めたことなら俺は止めないよ。 それに、今すぐって理由でもないしね。」 「だからといって手を抜いて仕事をするわけではありませんから。」 その時神威はどんな顔をしていたのだろうか。 今となってはわからない。

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