Wednesday

その日の昼休みのこと 屋上に行ったらまた顔をあわせるかも と思い、教室で弁当を食べることにしたのだが… 「あ、いたいた。今日は屋上行かないの?」 「……」 ちらりと声の主をみて眉を顰めると 再び弁当へと視線を戻す 「そんな嫌そうな顔しないでよ」 周りからは哀れみ、嫉妬、好奇 いろんな視線がささってくるが できるだけ気にしないように そして今、目の前にいる存在を無視することにした 「そういや手作りなんだもんね。今度俺の分も作ってよ」 「……」 「ああ、どうせ作ってくれないだろうから、君の家に押しかけたほうが手っ取り早いか」 「……」 とかとか、一人でよくもまあこんなに話せるな と思うほどに喋るアイツ 「…うざい」 ボソッと呟いたはずなのだが アイツは聞き逃しはしなかった 「ははっ。よく言われるよ。でもまだ会って間もない奴に言われたのは初めてだなぁ」 「……」 「まただんまり?」 無言の睨み合いが続く あれ?今朝も同じようなことをしなかったか? なんて考えていたら不意に視界から消えた。 そこにいたはずのうざやが やっといなくなったか、と思ったのも束の間 次の瞬間にはうざやの顔が視界いっぱいにうつった そして何かが唇に触れる感触 キスされたのだ、と理解したのはお互いのソレが離れてからだった 今まで男の“お”の字もなかった私は勿論ファーストキスで そのファーストキスをこんなやつに奪われた 暫くはショックで硬直したままの私に平然と言葉を投げかける 「もしかして初めてだった?」 ニヤニヤと笑うその顔が苛々を増幅させて 沸々と湧き上がる怒りを堪えることができなかった 私は俯けていた顔を上げ 机を叩いて勢いよく立ち上がりキッと睨み付ける 「あんたさ、今私に何したかわかってんの!へらへら笑いやがって、人ラブだかなんだか知らないけど、少しは人の気持ちも考えなさいよ!すっごい迷惑なの!あんたのことなんか嫌いなのに!なのにっ…思い出すだけで反吐が出るっ!…もう私の目の前に現れないで!」 静まり返った教室 アイツも驚いた顔をしていたが急に笑い始めた 「あははははっ!いやはや驚いたよ。君はもっと冷静な人間だと思ってたんだけど」 尚も笑い続けるアイツに ああ、本当にこいつはいかれてる と、改めて実感させられる そいつに私は平手打ちをお見舞いしてやった 乾いた音が響いて一言 「最低」 そういって私は教室をでた 走って走って、何度か人にぶつかったけど それでも走り続けた 頬を伝う涙も拭わずに Wednesday 少し黙ろうか。

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