いっぱいのきもち

ーどこー?」 宇宙船内に声が響く 「探すのもいいが、仕事もしてくれないと困るんだが」 「何言ってるの紫苑探すのも仕事の一つだよ」 朝からどうにもの姿が見えない いつもならデスクワークに勤しんでいるはずなのだが 今日に限って執務室にはいなかった。 探し回ること数時間。 昼になってもは姿を現さない。 「がグレた…」 すっかり元気がなくなった神威というのもそれはそれで珍しいが だんだんいたたまれない気持ちにもなる。 机に突っ伏したままの神威に何か一声かけてやろうと思った時だった。 音を立てて扉が開き、息を切らしてが戻ってきた。 「ご、ごめんなさい遅くなりました!」 「おう。用事は済んだのか?」 「なんとか…」 恐らくこの会話を神威は突っ伏しながらも聞いてるだろう となれば大目玉をくらうことは間違いなかった。 阿伏兎はそそくさと部屋を出ていった。 「、今までどこに行ってたの?仕事さぼって」 はきょとんとした顔をしたが 神威の雰囲気で冗談等の類ではないということを察した。 「いえ、副団長にはちゃんと許可をとりました。今日の午前だけ休むって。聞いてませんでした?」 「ふーん…団長には言わなくて副団長には言うんだね。で、何しにどこにいってたの?」 どうやら自分にだけ言ってくれなかったことに腹を立てているらしい 「それは、その…。」 グ- 静かな室内に音が響いた 「…団長?」 「あーもう!からおいしそうな匂いするからお腹空いた!食堂行ってくる!」 がばっと顔を上げたかと思うと いつもの調子で横を通り過ぎようとする その様子にほっとしながら しかし今食堂に行かれては困ると思い、なんとか引き止める。 「待ってください!」 「何?」 は意を決して午前していたことを話した 「実は…」 普段からデスクワークはしない団長を どうしたら仕事をしてくれるだろうかと考えた。 それで、何か弁当でも作って機嫌をとろうと思いまして。 「随分料理してなかったので材料調達も兼ねて地球に行ってたんです…。そもそも上司を食べ物で釣ろうなんて考えもどうなんだって気がしますけど…。」 次は神威がきょとんとする番だった 「俺のために?わざわざ?」 「団長のためじゃないです。仕事のためです。」 るんるんと鼻歌が聞こえてきそうな雰囲気の団長はそのまま弁当を貪り そして相変わらず綺麗に完食した。 「さて、が折角頑張ってくれたことだし、俺も仕事しようかな」 「そうです!さあ午後からあの机の上にある書類を!」 しかし団長はぐーっと伸びをした後書類には向かわずに扉へと向かった 「そっちに仕事はないですってばっ!」 「いやいや、大事な仕事があるからちょっと行ってくるね」 残ったのはの深いため息だけだった。

*end*

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