白兎が染まった日

ヒュウッっと風が吹く さっきまで人が殺し合いを演じていたこの場は静まり返り 一人だけ立っていた 「片付いたか」 「雑魚ばっかりだったよ。こんなだったら阿伏兎だけで十分だったんじゃない?」 「んなこと言うなよ。一応任務なんだからな」 春雨艦内に戻ると こちらに向かってくる人影が見えた 「おかえり!神威」 そういって眩しいくらいの笑顔を向けてくる 「ただいま、は夜兎にも関わらず 戦場に出向いたことはない 血を浴びたことのない無垢な兎 「着替え用意しといたから」 「ありがと」 少ししか話さないけどその少しの時間が楽しみだった ある日 いつも出迎えてくれるがこなかった 「ねぇ、は?」 「あぁ、そういや任務に出てるはずだぞ?」 「そんなの言ってたっけー?」 まぁ、偶には俺から言おうかな なんて考えながら 俺は自室に戻った     コンコン 暫くして部屋に誰かが来た まぁ、ここに来るのは阿伏兎かしかいないんだけどね 「だれ?」 「私だよ」 そう言って入ってきたのは 「なんかあった?」 「一応報告書出しに…」 「そういや今日が初任務だったんだよね?どうだった?」 「どうだったって言われても…でも、楽しかったよ!」 そう言ったの瞳には もうあの頃の 穢れを知らなかった無垢な兎と違う 血を浴び 殺すことの楽しみを 修羅を知った 一匹の兎―…

*end*

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